日々、仕事に追われるがゆえ(というより生活そのものか?)、ここ数年「旅行」の二文字を忘れていた友人が、ちょっとばかし強引に連休を取り、バリ島へやって来た。
そんな珍しいことをしてくれたものだから、天変地異とまではいかずとも、いよいよ着陸というタイミングで激しい豪雨に見舞われるという災難を引き起こしてしまい、「飛行機がしばらく上空で旋回していた」と、力なく笑う友人。
「ひょっとして雨男でしょっ?! カンベンしてよ」とか言いながらも、車内で無事な再会を喜びあう二人とは対照的に、寡黙を貫き通す男が二人。
一人は豪雨の中、決死のハンドルさばきを見せ、「なにがなんでもゲストを迎え入れる」というアッパレな男気を見せたドライバーのアグン。
そしてもう一人、そんなアグンにつたない日本語で「アグンサン、ガンバッテー」と園児並みの純真なテンションで声援を送っていた、宿のお出迎え係のワヤン。
今やもう、その熱き魂のカケラも感じないほど冷え切ってしまった二人の青年。
空港到着からわずか一時間の間で、一体彼らになにが起こったというのだろうか
それは、原因があるであろう過去を、さかのぼること数日前。
私「アグン、4月1日に友達が来るから空港までお出迎えをお願いします」
アグン「トモダチ、キレイなオンナ?」
私「・・・。うん。すっごくキレイなオンナ」
アグン「オッケー! オッケー!!」
謎が解明したであろうか?
すべての原因は、アグンの「先走った思い込みと強い願望」が発端であり、そこに双方の思惑が絡み合い、ちょっとした事故を発生させてしまったということを。
さらにそこに「今日は、見逃せないサッカーの試合放映があるけど、あえて自分はこの宿のスタッフとして、(キレイな)ゲストをピックアップすることを優先します」という、よこしまなワヤンの使命感が、この場の状況をさらに悲惨なものにしてしまったと言える。
そうはいっても、最終的に、そして客観的に見たら、「どんな事情があれども、嘘をつき、人の心を利用するのはヨロシクナイ」となるであろう。
それでは、悪の根源はこのわたし?
でもさ。
そーいえば、今日って「エイプリールフール」じゃん。
どんな嘘やタチの悪い冗談も、無条件で笑って許される日だよねぇ?
そう考えたら、実はやってくるのが「男」の友人なのにも関わらず、空港まで出迎えの車を出してもらいたいがために「キレイな女がやってくる」と、健全な男の下心につけ込んだ騙し行為をしたとしても、そんなのカワイイものではないか。
あ。なんか今、男性諸君から一斉にブーイングを受けたような寒気を感じたけど、そんなんじゃひるまないぞっ! だって、なんだよ、それ。「友達が来る」って言ったら勝手に「女性が来る」って思い込んで、「観光に連れて行ってくれる」と快諾したにも関わらず、男が来た途端に「忙しい」って、さ。ちっちゃい男の下心ほどさむいものはないぞ。
追記:「観光拒否」の一件に、アグンとワヤンは一切関係しておりません。念のため。